00 · まず3分で

一つの軌道に隠れた、3つの運動

  1. 1地球の重力は月まで届き、その速度の向きを変え続けています。重力が消えれば、月は軌道の接線方向へほぼ直進します。
  2. 2月にはすでに横向きの速度があります。内側へ落ちるあいだに地球表面も下へ曲がるため、月は地面を外し続けます。
  3. 3実際の地球と月は共通重心のまわりを動き、軌道は太陽などに乱された楕円です。形も距離も永久に固定されてはいません。

01 · 重力こそが原因

月が空にいられるのは、下へ引かれているから

「月は遠いから、地球の重力がほとんど届かない」という説明は逆です。重力は距離とともに弱くなりますが、月の位置でも進路を内側へ曲げる加速度を与え続けています。

もし地球の重力だけが一瞬で消えれば、月は空中に止まりません。その時点の速度を保ち、軌道の接線に近い向きへ進みます。直進して去るのを防いでいるのが重力です。

02 · 速さには向きがある

重力は、月の「進む向き」を変える

速度は速さだけでなく向きを含みます。月の速度はその瞬間の軌道にほぼ沿い、重力加速度は地球と月の共通重心の方向を向きます。

以前の速度に、小さな内向きの変化を足すと、次の速度は少し内側を向きます。これが連続して曲線になります。慣性系で考えるなら、月を外へ支える実在の力は不要で、実在する力は重力です。

FIG. 02速度が連続的に曲がる、一瞬の内訳
ある一瞬のベクトル合成。同じ内向きの変化が絶えず繰り返され、曲線の軌道になります。

03 · 曲面のまわりを落ちる

月が落ちるぶんだけ、地面も下へ曲がる

ニュートンの高い山の思考実験では、遅い砲弾は近くへ落ち、速い砲弾はより遠くへ落ちます。空気がなく、十分な横向き速度があれば、物体が落ちるのと同じだけ球形の地表が遠ざかり、衝突しません。

半径rで円軌道になる速さは v = √(GM/r) です。理想的な二体問題では、それより遅い・速い運動は一般に楕円になり、その地点の円軌道速度の√2倍に達すると束縛を離れます。

「地球を外す」のは一度きりの偶然ではありません。重力が軌道のすべての地点で内向きの曲がりを更新します。
FIG. 04 · 操作図横向き速度を変えてみる

空気のない理想的な二体問題で、出発点を地球半径の2倍に固定しました。重力はいつも内向きでも、速度で進路が変わります。

束縛軌道1.00× vc

落下が閉じた軌道になる

1.00倍付近では円に、ほかの束縛速度では楕円になります。

円軌道 · 1.00倍脱出 · 1.41倍
概念モデルで、実際の月の縮尺ではありません。しきい値は出発半径で変わり、実際の月は太陽などの摂動を受けます。

04 · 実際の月軌道

月が描くのは、完璧な円ではない

地球と月の中心間の平均距離は約38万4400キロメートルです。

恒星を基準にすると、月は約27.3日で軌道を一周します。

月の軌道はわずかに離心した楕円で、距離は近地点と遠地点のあいだで変化します。太陽はこの楕円を強く乱し、向きや傾きも長い周期で変わります。整った円は理解の入口ですが、宇宙に敷かれた実物のレールではありません。

05 · 地球も動いている

二つの天体は、共通の重心を回る

地球が月を引く力と、月が地球を引く力は大きさが等しく向きが反対です。地球の質量は月の約81倍なので共通重心は地球内部にありますが、地球中心とは一致しません。

月の大きな周回と地球の小さな揺れは、一つの運動の両側です。「月が地球を回る」は多くの場合に優れた近似で、共通重心を使うとさらに完全な記述になります。

FIG. 03地球と月は、一つの点を共有して回る
概念図。地球の質量が大きいため共通重心は地球内部にありますが、地球中心もそのまわりを小さく回ります。

06 · 変化する軌道

潮汐は、地球の自転を月の軌道運動へ少しずつ渡す

月レーザー測距によると、月の平均距離は1年に約3.8センチメートルずつ増えています。

地球は月の公転より速く自転します。潮汐の膨らみは地球と月を結ぶ線よりわずかに先行し、その重力トルクが地球の自転を遅くし、角運動量を月の軌道へ移します。現在の後退率は測定値であり、宇宙史の全期間へ一定のまま延長できる値ではありません。

07 · 砲弾からレーザーへ

思考実験は、測り続ける軌道になった

ニュートンは、あり得ないほど高い山から砲弾を撃つ思考実験で、地上の落下と天上の軌道を一つの力学に結びました。同じ原理が、人工衛星や月探査機の軌道計算を可能にしました。

アポロ宇宙飛行士と旧ソ連の無人探査機は、月面に反射鏡を設置しました。地球から送ったレーザーの往復時間を測ることで、月の暦、潮汐進化、月内部、重力理論まで検証されています。

08 · 証拠をたどる

公式の力学解説、軌道データ、レーザー測距

5言語版で同じ6資料を共有し、理解用モデルと実際に測られた月軌道を分けています。

  1. 01
    NASA/JPL · Basics of Space Flight: Gravity & Mechanics

    自由落下、ニュートンの砲弾、軌道力学を説明するNASA/JPLの公式ガイド。

    公式ガイド
  2. 02
    NASA Science · Moon Facts

    平均距離と公転周期を示すNASAの月データ。

    公式データ
  3. 03
    NASA GSFC · Eclipses and the Moon’s Orbit

    離心率、近地点、遠地点、複数の月周期を示すNASA GSFC資料。

    公式資料
  4. 04
    JPL Solar System Dynamics · Barycenter

    地球–月の共通重心を定義するJPL太陽系力学用語集。

    技術用語集
  5. 05
    JPL · The Apollo Experiment That Keeps on Giving

    アポロ反射鏡と測定された後退率を解説するJPL資料。

    公式解説
  6. 06
    Williams et al. · Lunar Laser Ranging Science

    月レーザー測距科学の一次技術レビュー。

    一次レビュー
更新履歴2026年8月26日 · 5言語初版。衝突・束縛軌道・脱出を分けて記述。